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MEDLEYオフィシャルブログ

株式会社メドレーのオフィシャルブログです。

遠隔診療の法的整理 〜連載第2回 「遠隔診療」と「遠隔医療相談」〜

オンライン診療アプリ「CLINICS」

こんにちは。メドレーの法務統括責任者の田丸です。

前回の第1回は遠隔診療にかかわる法的規制という固いトピックだったのですが、想定外に様々な読者の方から反響をいただきました。前回は法律の条文などを引用した固い話でしたが、今回は少し柔らかい、「遠隔診療」という言葉の整理をトピックにさせて頂きたいと思います。

Q:「遠隔診療」とはなんですか?

皆さんは「遠隔診療」という言葉を聞いてどのような状況を思い浮かべるでしょうか。言葉の語感からは、医師と患者が遠隔地にいて診療を行っている、という状況を思い浮かべると思いますが、「遠隔診療」を含む「遠隔医療」という大きな概念の中での分類を大まかにいうと以下のような分類になります。

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〜「遠隔医療」と呼ばれるものの分類〜 

上図で用いられている用語のそれぞれの意味は、以下の通りです(なお、それぞれの用語の定義は公式なものではなくあくまで私の個人的見解です)。 

  • 遠隔医療」:最も広義の概念。日本遠隔医療学会によれば、「遠隔医療(Telemedicine and Telecare)とは、通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為」と定義されています。従って、遠隔医療という言葉自体は、ヘルスケアや介護に関連したものも含むことになります。 
  • 隔診療」:遠隔医療のうち、医師が遠隔地の患者に対して診察・治療等つまり「診療」を提供する領域です。医師が患者への診療行為を行うため、医師法の規制を受けます。「D to P 遠隔診療」とは、Doctor to Patient (医師から患者に)の形式で行われる遠隔の診療を指した用語であり、上記の意味で用いられる「遠隔診療」の最も代表的な事例といえます。
    • なお、これに加えて「D to D 遠隔医療」という形で、地域の中核病院、特定機能病院や専門の診断センターの医師にX線写真やマンモグラフィー読影を依頼する、医師間での遠隔医療 / 遠隔診療などもあります。D to D の遠隔医療はかなり大きな広がりを持っており、トピックとしても非常に大きなものなので本稿では議論の対象外としています(上図の一番左側の矢印)。 
  • 遠隔医療相談」:遠隔医療のうち、医師等が遠隔地の患者に対して医療・健康に関連する相談を行う領域です。医師が提供することが原則ではありますが、診察や治療を行うものではなく、あくまでも相談行為の領域であることから、医師法の規制を受けないと考えられています。「D to P 遠隔医療相談」とは、上記のD to Pと同じくDoctor to Patient (医師から患者に)ではあるものの、あくまでも特定の疾患に対する診療ではなく、「相談」を提供するもの、という点に特徴があります。

 

  • 遠隔服薬指導」:こちらは、医師によるものではなく薬剤師による行為に関連する領域です(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(いわゆる薬機法)」の規制対象)が、皆さんが診療を受ける際に関連してくる領域です。皆さんが医療機関を受診し、処方せんで」医薬品を処方してもらった場合、その処方せんを調剤薬局に持参した上で医薬品を購入すると思います。その際に、薬剤師が用法・用量についての説明や飲み合わせなどについての指導をしてくれるとおもいますが、これが「服薬指導」と呼ばれる行為です。この服薬指導は、現在薬剤師については患者と対面で実施することしか認められておらず、遠隔服薬指導という行為は現時点では存在しないのですが、平成28年の国家戦略特別区域諮問会議において、規制緩和が提案されています。遠隔診療における医薬品の処方については、次回の第3回のトピックとして取り扱う予定です。

 

上記の各領域のうち、当社が提供する遠隔診療ソリューションCLINICS (クリニクス)は、実際に医療が実践されている場の一つである「遠隔診療」の領域において、医師が遠隔地にいる患者に対して(D to P)診察や治療を提供するために用いられることを想定したサービスとなっています。この領域は医師法の規制対象のため、「対面診療と適切に組み合わせた形でのオンライン診療が行われなければならない」というような厚生労働省からの通達や、医薬品の処方に関連する各関連法規を調査し、法規制に沿った形でより良い遠隔診療サービスが提供されるよう細心の注意を払ってサービスを設計しています。 

〜「遠隔医療相談」とは?〜

他方で、上記の領域のうちの「遠隔医療相談」とは、相談を受ける側の医師が、相談者である一般人(患者)に対して医療に関する相談を受けて、一般的・抽象的なアドバイスを提供するものです。

D to P の遠隔医療相談の事例では、医師が患者からの一般的な健康相談に対してアドバイスを提供することになりますが、実際の状況としては以下のようなものになります。

例:ある患者から医師に対して

患:「なんだか心臓の辺りが痛い気がします。ネットで検索したところ●●、▲▲、■■のような病気の可能性がありそうなのですが、実際どうなんでしょうか?」

という相談をして、それに対して医師が色々と質問をした上で

医:「それは一般論としては肋間神経痛の可能性が高そうですね。不安であれば医療機関を受診してみてください」

という回答をする。

私自身も、ちょっとした体の不調で病院に行くかどうかを迷うことがありますし、このような「相談」をするニーズはあるのだと思います。実際にも、この「遠隔医療相談」や「遠隔健康相談」に特化したサービスも登場してきています。

ここで重要なのは、遠隔医療相談はあくまでも相談であり、患者の健康状態について医師が一般的・抽象的な回答・アドバイスをするもので、個別具体的な回答・指示を行うものではないものとされている点です(=「診療」ではない)。「診療」ではなく一般的な「相談」であることから、「遠隔医療相談」は医師法の適用対象とは考えられていないのですが、実際の場面において「どこまでが相談で、どこからが診察・診断行為なのか」についての線引きはどうしても曖昧になりがちで、法適用の有無や法的責任の所在についての整理が難しくなってしまう、という懸念が挙げられています。

実際に世の中に存在するニーズに対応するものとして生まれてきているサービスではあるので、一概に法的責任の所在の曖昧さや、医師法の適用対象でないことの是非だけを論点として議論をすべきではないのはもちろんですが、「遠隔地にいても医師からの医療サービスを受けることができる」という医療における新たなサービス形態が、患者の安心感・納得感が得られる形で適切に広まっていくためには、患者の声、現場の医師の声を聞きながら、適切な遠隔医療のあり方について積極的な議論が行われていくことが非常に重要だと思っています。

当社は、今後も遠隔診療についての患者の皆さんの声、現場の医師の皆さんの声に耳を傾けながら、より多くの「納得できる医療」を実現するためにチーム一同尽力していきます。

遠隔診療ソリューションCLINICSの導入に興味がある、まずは説明を聞いてみたい、という医療従事者の方は、是非お気軽にお問い合わせください。

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 さて、結局前回と同様に最後は固い話になってしまいましたが、また皆さんからフィードバックなど頂ければ幸いです。次回は、遠隔診療における医薬品の処方の問題について取り扱いたいと思います。乞うご期待!

 

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株式会社メドレー 法務統括責任者 田丸 雄太

2007年東京大学法学部卒、2008年東京第二弁護士会登録(61期)。2008年より大手外資系法律事務所にて弁護士としてクロスボーダーM&Aや一般企業法務のアドバイザリー業務に携わった後、大手商社のM&A推進部門への出向経験を経て、2016年にメドレーに参画。大手商社出向時代には、メディカル・ヘルスケア部門の海外向け投資案件などにも多く関与。